少子化の主な直接原因は晩産化の進展による女性一人あたりの生涯出産数の減少である。
晩産化が進む背景として、女性の就労機会の上昇などライフスタイルの変化によって結婚・育児の人生における優先順位が低下する中、結婚や育児・教育環境に高い条件を求める傾向が強まっていることが挙げられる。女性の就業率と出産率の間には正の相関があり、むしろ女性が働くほど子供も増えたことが指摘されていたが、OECD諸国の国際比較で、女性就業率と出生率に弱いながらも正の相関があるように見えていたのは国ごとの、各種の政策等を考慮しない単純比較だからであり、かつてより弱まる傾向はあるものの依然として女性の就業率と出生率の間には負の相関があるとの分析もある。また日本単独での地域ごとの比較の場合、未婚の女性が特定地域に集中していることを無視している可能性がある。例えば地方から都市圏の大学に娘が進学し、それを支えるため母親が地元でパートに出た場合、一見すると地方部における就業率と出生率に正の相関をもたらす。
また、結婚と出産が文化的に密接な関係を保っている地域では晩婚化の進展および生涯未婚率の上昇が晩産化・無産化につながる例が多い。
日本の出生率低下は戦前から始まっていたが、戦時中の出産先送り現象のため終戦直後の1940年代後半にはベビーブームが起き、出生数は年間約270万人に達した(1947年の合計特殊出生率は4.54)。
しかし1950年代には希望子供数が減少し、人工妊娠中絶(1948年合法化)の急速な普及をバネに出生数は減少し、1961年には、出生数159万人(合計特殊出生率1.96)にまで減少した。
その後、出生数が若干回復傾向を示し、1960年代から1970年代前半にかけて高度成長を背景に出生率は2.13前後で安定する。このとき、合計特殊出生率はほぼ横ばいであったが、出生数は増加し、200万人以上となったため第二次ベビーブームと呼ばれた。
しかし1973年をピーク(出生数約209万人、合計特殊出生率 2.14)として、第一次オイルショック後の1975年には出生率が2を下回り、出生数は200万人を割り込んだ。以降、人口置換水準を回復せず、少子化状態となった。
その後さらに出生率減少傾向が進み、1987年には一年間の出生数が丙午のため出産抑制が生じた1966年(約138万人)の出生数を初めて割り込み、出生数は約135万人であった。1989年の人口動態統計では合計特殊出生率が1.57となり、1966年の1.58をも下回ったため「1.57ショック」として社会的関心を集めた。同年、民間調査機関の未来予測研究所は『出生数異常低下の影響と対策』と題する研究報告で2000年の出生数が110万人台に半減すると予想し日本経済が破局的事態に陥ると警告した。一方、厚生省(現・厚生労働省)の将来人口推計は出生率が回復するという予測を出し続けた。1992年度の国民生活白書で少子化という言葉が使われ、一般に広まった。さらに、1995年に生産年齢人口(15〜64歳)が最高値(8717万人)となり、1996年より減少過程に入った。
その後も出生率の減少傾向は続き、2005年には、出生数が約106万人、合計特殊出生率は1.26と1947年以降の統計史上過去最低となり、総人口の減少も始まった。2005年には同年の労働力人口は6650万人(ピークは1998年の6793万人)であったが、少子化が続いた場合、2030年には06年と比較して1070万人の労働力が減少すると予想される。
その後、若干の回復傾向を示し、2009年には出生数が約107万人、合計特殊出生率が1.37となった。なお、2010年の月報年計の概数では、出生数が約107万人、合計特殊出生率が1.39を示している。
しかし、15歳から49歳までの女性の数が減少しており、そのため、合計特殊出生率が上昇しても出生数はあまり増加せず、2005年に出生数が110万人を切って以降、出生数は110万人を切り続けている。
| 年 | 1970 | 1980 | 1990 | 2000 | 2001 | 2002 | 2003 | 2004 | 2005 | 2006 | 2007 | 2008 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 出生数(万人) | 193.4 | 157.7 | 122.2 | 119.1 | 117.1 | 115.4 | 112.4 | 111.1 | 106.3 | 109.3 | 109.0 | 109.1 |
| 出生率(‰) | 18.8 | 13.6 | 10.0 | 9.5 | 9.3 | 9.2 | 8.9 | 8.8 | 8.4 | 8.7 | 8.6 | 8.7 |
| 標準化出生率(‰) | 15.26 | 12.76 | 10.74 | 9.51 | 9.29 | 9.21 | 8.99 | 8.95 | 8.72 | 9.06 | 9.16 | 9.34 |
| 合計特殊出生率 | 2.13 | 1.75 | 1.54 | 1.36 | 1.33 | 1.32 | 1.29 | 1.29 | 1.26 | 1.32 | 1.34 | 1.37 |
| 純再生産率 | 1.00 | 0.83 | 0.74 | 0.65 | 0.64 | 0.64 | 0.62 | 0.62 | 0.61 | 0.64 | 0.64 | 0.66 |
内閣府の「少子化に関する国際意識調査」は、米国、フランス、韓国、スウェーデン、そして日本という5カ国のおよそ1000人の男女を対象として 2005年に行った少子化についての意識調査の結果を報告している。これによると、「子供を増やしたくない」と答えた割合は53.1%と、他の4カ国と比 較して最も多かった。(他国の増やしたくないと答えた割合はスウェーデン11%、米国12.5%、フランス22.6%、韓国52.5%)。「子供を増やし たい」と答えた割合が最も少ないのも日本であった。子供が欲しいかとの問いについては、いずれの国も9割以上が「欲しい」と回答している。
日本政府は平成16年版少子化社会白書において「合計特殊出生率が人口置き換え水準をはるかに下まわり、かつ、子供の数が高齢者人口(65歳以上人口)よりも少なくなった社会」を「少子社会」と定義している。日本は1997年に少子社会となった。日本の人口置換水準は2.08と推計されているが、日本の出生率は1974年以降2.08を下回っており、日本の総人口は2005年に戦後初めて自然減少した。
晩産化、無産化が少子化の主な直接原因である。日本では婚外子を忌避する文化が強く、社会制度などの面でも不利があるため、未婚化・晩婚化の進展が少子化に強く影響している。また、結婚した場合も経済的理由により子供が生まれたときの十分な養育費が確保できる見通しがたたないと考え、出産を控える傾向がある。
企業による派遣労働の採用など、雇用形態が流動的になり将来の生活に展望がもてない場合が多くなっており、結婚や出産を諦めざるを得ないケースが増加している。特に登録型派遣の場合、法律上は育児休業の権利があっても実際には契約が解除されるなどして取得できないことが多いため、育休取得率は3割にとどまっており、正社員なら通常受けられる公的給付金が受けられないケースもある。仮に育児休業を取得できたとしても元の職場には復帰できないのが通例であり、保育園への入園選考で、派遣先が決まっていないとして正社員に比べて不利に取り扱われるため出産後の職場復帰のハードルが高いといったことも出産を躊躇する原因となっている。労働政策研究・研修機構の2005年のレポートによれば、男性は正社員であれば結婚率が高く、また収入が高いほど結婚率が高くなる。女性については、収入と結婚率との間に明確な差は現れてはいない。
子育てにかかる費用が高いことも要因として指摘されている。国民生活白書によれば子供一人に対し1300万円の養育費がかかるという。但しこの数値 は基本的な生活費によるもので、高校や大学への進学費を含めると最低2,100万円はかかるという。経済産業研究所の藤原美貴子は日本人官僚に対するセミ ナーで「今の日本において、子育ては非常に高くつきます。ですから、子供を作るか、夏用の別荘を買うか、最新モデルのベンツを買うか、という選択を迫られ ているようなものです。」と説明している。
その他の要因として、戦後の核家族化・女性の専業主婦化や、産婦人科医・小児科医の不足(→出産難民参照)、治安に対する不安の高まりなどが指摘されている。
| 所得\年齢 | 20〜24歳 | 25〜29歳 | 30〜34歳 | 35〜39歳 |
|---|---|---|---|---|
| 〜99万円 | 0.7 | 0.6 | 10.8 | 12.8 |
| 100〜199万円 | 2.3 | 7.9 | 19.1 | 30.0 |
| 200〜299万円 | 4.2 | 11.4 | 25.2 | 37.9 |
| 300〜499万円 | 7.8 | 18.9 | 37.8 | 51.1 |
| 500〜699万円 | 8.2 | 28.9 | 50.5 | 62.4 |
| 700万円〜 | 10.3 | 27.1 | 52.0 | 70.7 |
資料出典:若年者雇用の不安定化の概況
中小企業庁は「配偶者や子供がいる割合」は概ね所得の高い層に多く、所得が低くなるに従って未婚率が高くなるという傾向があり、低収入のフリーターの増加は、結婚率、出生率の低下を招く」と分析している。
日本では男女雇用機会均等法の施行等、女性の社会進出により出生率が低下したとの意見があり、確かに国際的には出生率と女性の就業率は負の相関があるとする研究がある。一方で「結婚したから就業しない。就業したから結婚しない」という説明はわかりやすいものの、明確に因果関係があると示されているわけではない。日本国内における地域比較において、「女性の社会進出は出生率の上昇に寄与する」とする研究もある。
厚生労働省の人口動態統計によると、1980年以降20代の出生率は低下し、30代の出生率は上昇しているが、全体の出生率は下がり続けている。ま た、1980年ごろまでは、20代後半で産む割合が5割以上であったが、それ以降減少し、2003年には30代前半よりも低くなり、2009年には、約3 割にまで減少している。さらに、30代後半で産む割合が増加傾向であり、2009年には約2割にまで上昇している。1980年以降、未婚率、平均初婚年 齢、初産時平均年齢は上昇している。1950年代生まれの世代までは、完結出生児数は2.2人前後と安定した水準を維持していたが、1990年前後に結婚 した1960年代生まれの夫婦からは年齢に対する出生児数の低下がみられる。
第12回出生動向基本調査(2002年)によると、結婚持続期間が0〜4年の夫婦の平均理想子供数と平均予定子供数は上の世代より減少しており、少子化の加速が懸念される。
厚生労働省の1998年から2002年までの人口動態統計によると、市区町村別の合計特殊出生率は渋谷区が最低の 0.75 であり、最高は沖縄県多良間村の 3.14 であった。少子化傾向は都市部に顕著で、2004年7月の「平成15年人口動態統計(概数)」によれば、最も合計特殊出生率が低い東京都は全国で初めて 1.00 を下回った(発表された数字は 0.9987 で、切り上げると1.00となる)。一方、出生率の上位10町村はいずれも島(島嶼部)であった。
首都圏(1都3県)については、20-39歳の女性の約3割が集中しているにもかかわらず、出生率は低く「次の世代の再生産に失敗している」より引用。そのため、「都市圏の出生率が低くても地方から人を集めればいいという安易な発想は、日本全体の少子化を加速させ、経済を縮小させる」との指摘がある。
日本政府は出生力回復を目指す施策を推進する一方、少子高齢化社会に対応した社会保障制度の改正と経済政策の研究に取り組んでいる。
1980年代以降、政府・財界では高齢者の増加による社会保障費の増大や、労働人口の減少により社会の活力が低下することへの懸念などから抜本的な対策を講じるべきだとの論議が次第に活発化した。
政府は1995年度から本格的な少子化対策に着手し、育児休業制度の整備、傷病児の看護休暇制度の普及促進、保育所の充実などの子育て支援や、乳幼児や妊婦への保健サービスの強化を進めてきた。しかし政府の対策は十分な効果を上げられず、2002年の合計特殊出生率は 1.29 へ低下し、第二次世界大戦後初めて 1.2 台に落ち込んだ。
出生率低下の主要因は高学歴化・長時間労働・未婚化・晩婚化・ 企業による派遣制度などの雇用状態の変化による時間外勤務手当等、諸手当のカットや低賃金と言われているが、結婚への政府介入には否定的な声が大きい。ま た日本では婚姻外で子をもうけることへの抵抗感も根強く、また男女間の給与体系格差が大きいため、女性一人では子供を育てにくい環境にある。そのため少子 化対策は主に既婚者を対象とせざるをえない状況にある。また長時間労働は自己の力で解決は難しいため何らかの対策が求められる。
2003年7月23日、超党派の国会議員により少子化社会対策基本法が成立し、9月に施行された。衆議院で の審議過程で「女性の自己決定権の考えに逆行する」との批判を受け、前文に「結婚や出産は個人の決定に基づく」の一文が盛り込まれた。基本法は少子化社会 に対応する基本理念や国、地方公共団体の責務を明確にした上で、安心して子供を生み、育てることのできる環境を整えるとしている。
2003年、政府は次世代育成支援対策推進法を成立・公布し、出産・育児環境の整備を進めている。
1997年、政府は健康保険法を改正、2000年に再改正し、患者負担、高額療養費、保険料率を見直した。少子高齢化は今後も進展するため、厚生労働省では医療制度改革の検討が続いている。
2000年、経済企画庁は「人口減少下の経済に関する研究会」を催し、女性・高齢者の就職率の上昇および生産性の上昇によって少子化のマイナス面を補い、1人あたりでも社会全体でもGDPを増大させ生活を改善していくことは十分に可能、との中間報告を公表した。
2004年、政府は年金制度を改正し、持続可能性の向上、多様な価値観への対応、制度への信頼確保を図った。しかし「現役世代に対する給付水準 50% の維持」の前提となる出生率 1.39 を現実の出生率が下回るなど、国民の不安は払拭されていない。
少子化対策は「出生力低下の要因への対応」と「少子化の影響への対応」の大きく2つに分けられ、いずれを重視し政策的に優先すべきかによって、基本的な少子化への姿勢が異なっている。
少子化には以下のようなデメリットがあり、出生力回復なしにそれらを回避することはできないという主張がある。
少子化のデメリットは以下のように克服できる。または、少子化の政策的解消は困難であり、少子化に対応した社会の再構築こそ重要であるという主張がある。
スウェーデンでは1980年代後半に出生率が急激に回復したことから少子化対策の成功例と言われ、日本において出産・育児への充実した社会的支援が注目されている。しかし、前述した通り、スウェーデンは高コストであった従来の出生率改善策を放棄しており、より長期的な観点に立ったイギリス式モデルによる改革を行っている。
また、オーストラリアでは1980年代から、日本では1990年代から、家族・子供向け公的支出がGDP比でほぼ毎年増加しているが、いずれも出生率は低落傾向が続いている。
個別の施策と出生率の関係を厳密に定量化することは難しく、高福祉が少子化を改善するか否かは総合的な観察からも明瞭な結論は導かれない。
人口減少下において労働人口を確保するためには(1960年代のヨーロッパ諸国のように)移民を積極的に受け入れざるをえない、との主張がある。
また「文化摩擦、社会の階層化、差別など深刻な社会問題が生じかねない」「移民は1〜3世代で少産のライフスタイルに同化する傾向にある」など、移 民の受入はデメリットが多くメリットが少ない、との反論がある。ドイツでは移民も一般的なドイツ人のライフスタイルと同様、少子化傾向が続く現象が起こっ ており、移民を受け入れても少子化の解決にはつながらず、現状の先送りにしかならないとみられる。
出産しない、出来ない女性の立場からは、フェミニストの社会学者、上野千鶴子が『1・57ショック 出生率・気にしているのはだれ?』(1991年)を著し、社会的整備を抜きに女性に対し一方的に子育てを押しつける社会のあり方に疑問を投げかけた。「気にしている」のは、「子供がいない女性」ではなく、政府・財界だと説明したのである。この上野の著作が嚆矢(初め)となって様々な著作が書かれている。
なお、女性の人工中絶を禁止することが少子化対策になるのではないかという意見もあるが、人工中絶を悪しきものとする倫理観が高いカトリック国のイタリアとドイツも、人工中絶数が多いロシアも、ともに日本並みに出生率が低く、人工中絶数と少子化の度合いに直接の関連性はみられない。
日本の人口密度は、世界的に見ても高いので、人口の減少による人口密度の低下は望ましい、との意見がある。都市部の過密解消、地価下落、住環境や自然環境の改善などに寄与するとされる。
これに対し、近代の社会システムは労働力と 資本の集約を前提としており、都市部への人口集中が続く限り、人口の減少は過疎地の増大と地方都市の荒廃をもたらすだけだ、との反論がある。また人口密度 の適正化は望ましいが、移行期に社会保障や経済などの面で圧迫される世代が生じるため、急激な少子化は容認できないとする意見もある。
ピラミッド型の人口分布を未来永劫維持しようとすれば無限の人口増加を続けなければならず、資源に限りのある地球上でこのような状態が維持できるこ とはあり得ない。まして、ただでさえ国土の狭い日本で人口増加を追求すれば、ほどなく破綻に至るのは明らかである。逆に、日本の人口減少によってもたらさ れる自然環境への負荷軽減や食料自給率の向上といったメリットを見据えつつ、人口減少により過剰となるインフラを廃棄・縮小したり、山間部の農地を山野に 戻したり、過度に郊外化した市街地を集約して山林や農地に変えていくなど「縮小社会」への転換を積極的に目指していくべきであるとの意見もある。
これまで、晩婚化は高齢出産につながり、女性の出生能力が減少するという観点から、女性の早期結婚が特に奨励されがちであった。そのため、男性の晩婚化については問題視されていなかった。しかし、近年の欧米の研究では、高齢により男性の精子の質も劣化し、子供ができる可能性が低下し染色体異常が発生しやすくなることなどが報告されている。
実際、日本の夫婦の平均年齢差は2歳であるが、不妊の理由は男性側・女性側の原因が概ね半々となっている。この観点からは、男性・女性ともに早期に結婚し子供を作ることが、少子化対策としては望ましいといえる。
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